
目次
- Chapter 1.
- エルゴチオネインとは?
- Chapter 2.
- 生体内のエルゴチオネインの蓄積
- Chapter 3.
- 活性酸素の産生
- Chapter 4.
- 活性酸素の消去
- Chapter 5.
- エルゴチオネインの将来展望
ヒスチジンのトリメチルベタイン誘導体であるL-エルゴチオネイン(以下、EGT)は、100年以上前に麦角菌(Claviceps purpurea)から発見されました。その後、EGTは一部のキノコ(担子菌類)やAspergillus oryzae、Strepto-myces属、シアノバクテリアなどの微生物で合成されることが明らかになりました。ヒトや動物は体内でEGTを合成することはできませんが、組織・臓器はEGTを高濃度に保持しており、恒常性の調節に不可欠な役割を担っていることが明らかになっています。実際に、EGTはグルタチオン、ビタミンEやC、カロテノイド、フラボノイドなどのポリフェノールなど、食事由来の抗酸化物質と同様に、活性酸素に対する酸化還元恒常性を維持することができます。例えば、食事から吸収されたポリフェノールは速やかに代謝され、体外に排泄されます。また、ポリフェノール化合物の中には、特定の条件下で酸化されるにより活性酸素が発生するものがあり、ポリフェノールのプロオキシダント作用が有害である場合があることが報告されています。また、EGTにはOCTN1(organic cation transporter novel type-1)という特異的なトランスポーターがあり、食事からヒトの組織にEGTを取り込み、選択的に蓄積することが知られています。また、EGTは人体に対して毒性を示さない安全な物質です。そのため、紫外線による皮膚の老化、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病)、うつ病、白内障、心臓・血管疾患など、さまざまな活性酸素に関連するリスクに対して有益な化合物としてEGTに関心が高まっています。さらに、EGTは近年「長寿ビタミン」として提唱され、その機能性が注目されています。
本書では、EGTの物性や抗酸化機能について紹介しています。
本書では、EGTの物性や抗酸化機能について紹介しています。
(本書Introductionより抜粋)

*Ames, B.N. Prolonging healthy aging: Longevity vitamins and proteins. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2018, 115: 10836–10844.
e-Bookは右のリンクから入手できます(e-Bookは英語版での提供となります):Essential Knowledge Briefings
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